2012/11/26

第二宇宙速度の求め方

だいぶ昔に、第一宇宙速度の求め方を投稿しました。今度は第二宇宙速度です。
第二宇宙速度とは、ある惑星から物体を放り投げたとき、その物体が惑星の重力を振りきる(惑星に落下しない)ための最小の速度です。つまり、第二宇宙速度で放り投げた物体は、永遠に惑星から遠ざかり続けます。第二宇宙速度よりも遅い速度で投げると、物体は惑星に落下してしまいます。

さて、では第二宇宙速度を求めてみましょう。
問題設定としては、以下のような感じです。
惑星から、鉛直上向きに、初速v_0で投げ上げます。物体は時刻tのとき位置xに所在し、速度vを持っています。惑星の質量をM、物体の質量をmとします。また、x軸の原点を惑星の中心にとります。


まずはじめに考えたやり方:「運動方程式をそのまま積分しちゃえ!」
物体が受ける力Fは、万有引力の法則より
です。よって運動方程式は
(Fはx軸と向きが逆なので、マイナスがつきます。)
これを時間で積分すれば速度が出てくるはずです。そこから速度が永遠に正の値をとるための条件を求めれば、第二宇宙速度が分かります。というわけで積分してみましょう。

さて、右辺の積分ですが…xはtの関数です。この積分、たぶんできませんよね。
というわけで、この方法は諦めます。


仕方ないので次に考えたやり方:「エネルギーを使おう」
この問題では、以下の力学的エネルギー保存則が成り立ちます。
(これは、さきほどの運動方程式をxで積分すれば得られます。)
さて、一番最初に、地表から初速v_0で真上に投げあげています。このときの全力学的エネルギーは、惑星の半径(=地表におけるx座標)をRとすれば、
よって力学的エネルギー保存則は
と表されます。
さて、ここで問題が…教科書などには、「無限遠点でv≧0となるためには、(無限遠点での運動エネルギー)≧0」などと書かれていますが、これは本当なのでしょうか。僕はこの点に疑問を持ちました。
エネルギーというのはスカラー量です。だから、物体がどこかしらの向きに速さを持っていれば、その物体はエネルギーを持っていることになってしまいます。つまり、(運動エネルギー)≧0だからといって、物体が惑星から離れる向きに速度を持っているとは限らないのです。(この部分の記述について、下に追記(11/30)があります。)
ここからどのように議論を進めていけばよいでしょうか…
とりあえず、先ほどのエネルギー保存則の式を、vについて解いてみましょう。
これは、「位置が指定されれば速度が定まる」という関数になっています。
根号が出てきました。根号の中身は正でなければなりませんから、任意のxについて以下の不等式を満たさなければなりません。
この式は、等号成立時にxが最大で右辺の値になる、ということを表していますから、物体は
まで行ける、ということを意味しています。
いま、物体は無限の彼方まで行ってほしい、つまり
となってほしいので、物体が無限の彼方まで行くための条件は、

となります。
この、√(2GM/R)という値が、第二宇宙速度となります。



うーん、なんかしっくりこないなぁ…この議論だと、v_0が第二宇宙速度よりも早くなっちゃったときに変なことが起こっちゃいそうだし…

もっとしっくりくる方法を考えて、また投稿します。何か別の方法を知っているという方は、教えていただけると嬉しいです。コメントか、またはmhasegawa.net@gmail.comまでお願いします!



(追記 11/30)
上の方に「物体がどこかしらの向きに速さを持っていれば、その物体はエネルギーを持っていることになってしまいます。つまり、(運動エネルギー)≧0だからといって、物体が惑星から離れる向きに速度を持っているとは限らないのです。」と書きました。しかし、Google+での議論から、この記述は正しくないんじゃないか…と思うようになりました。
いま、物体が無限遠点に行くときのことを考えています。さて、「無限遠点でv<0(速度が、物体が惑星に近づく向き)にある」とはどのような状況なのでしょうか。
最初、v(0)=v_0 > 0で打ち上げています。無限に時間が経った後では、v(∞)<0となります。ですから、有限の時間のうちに一度v=0とならなければなりません。v=0、つまり物体が静止しているとき、その物体が「無限に遠い」場所にいる、と表現することはできません。静止しているのですから、絶対に惑星の中心からの距離が測れるはずです。つまり、「無限遠点で速度が負」というのは、矛盾があるのです。よって、「物体が無限遠点で運動エネルギーを持っている」ならば、その速度は必ず惑星から遠ざかる向きにある、と言って良いのでしょう。

2012/08/23

等加速度運動・第3の公式"v^2 - v0^2 = 2ax"の意味

等加速度運動といえば、教科書の一番最初に載っている重要な公式が3つあります。
今回考えるのは、一番最後の式
の意味です。

まずは次元(単位)を考えてみましょう。左辺が速度の2乗になっていますから、この式の次元は [m^2 / s^2]ですね。この単位の物理的な意味は…と考えてみても、思いつきません。そこで、両辺に 1/2 m をかけてみましょう。

どこかで見覚えがないでしょうか。よく見かける形に直すためにに、右辺の第2項 max の加速度aを重力加速度gに、変位xを高さhに書き換えて、左辺にmg×0を加えてみると…

もうお分かりでしょう。この式は、力学的エネルギー保存則を意味していたのです。

-------------------------------------------------------------
ここで一旦公式から離れて、力学的エネルギー保存則を導出しましょう(簡単のため、ここでは1次元運動を考えます)。
運動方程式
の両辺にvをかけます。

ここで、左辺のことを考えます。加速度 a は速度 v の微分(加速度の定義)ですから、書きなおすと
以後、淡々と(うまくいくように)計算すると
注・3行目から4行目にかけての式変形に納得ができない方は、逆に4行目の式を変形すると3行目に戻ることを確認してみてください。合成関数の微分公式より、(v × v)' = v'v + vv'です。
注・1/2 m は定数ですから、5行目から6行目にかけての式変形が成り立ちます。

よって、運動方程式の両辺に v をかけた式

は、
と書きなおすことができます。さて、両辺を時間t=0~tで積分してみましょう。ここで、t=0のときの速度をv0、t=tのときの速度をvとします。

ここで、Fが一定のときのことを考えます。Fが一定のとき、Fは定数ですから、積分の外に出すことができます。
速度は変位の微分(速度の定義)ですから、速度を積分すると変位になります。t=0のときx=0, t=tのときx=xとする(時間tの間の変位をxとする)と、上式は
運動方程式より、ma=Fですから、さらに変形して
よって、両辺を 1/2 m で割って



条件を整理すると、
t=0 のときの速度を v0
t秒後の速度をv
t秒間の変位をx(t=0のときの座標が0, t=tのときの座標がx)
とし、
F=const.(一定)、つまりma=const. ∴a=const.(等加速度)であるときに、
運動方程式を変形して力学的エネルギー保存則を導出し、そこからさらに「等加速度運動の公式」である
が導かれることがわかりました。

2012/07/18

第一宇宙速度の求め方

第一宇宙速度とは、「地球の地表すれすれに衛星として存在するために必要な速さ」のことです。(Wikipedia
調べれば第一宇宙速度の求め方なんていろいろと出てくるんですが、自分流に問いてみました。

問題
「質量mの物体を、地球の接線方向に向かって投げる。このとき、この物体が地表すれすれで等速円運動を行うために必要な初速を求めよ。ただし地球の半径を6400km、重力加速度を9.8m/s^2とする。」

自分なりの解答↓




























約7.9km/h。Wikipediaに書いてあった答えとも一致しました。

いかがでしょうか。

2012/05/29

(x^a)'=ax^(a-1) 〜冪関数の微分〜

数学Ⅱでは、冪関数の微分の公式として
という公式を習います。
この公式の証明は、x^a という関数を導関数の定義にあてはめて、二項定理を使って行います。

二項定理は、(α+β)^n を計算するための定理ですが、ここでのnは自然数です。ですから、二項定理による証明は、x^a のaが自然数のときでなければ成立しません(つまり、xの2乗だとか3乗だとか、という関数の微分は二項定理によって証明できますが、x^(1/2)=√x だとか、x^(-1)=1/x という関数の微分は二項定理によって証明できません)。

ですが、冒頭に挙げたの公式 (x^a)'=ax^(a-1) は、実数全体について成り立つらしい…
というわけで、これを指数関数の微分を使って証明してみました。
数学的に正しいのか、あんま自信ないけど…

ではいきます。詳しい説明は後に回して、とりあえず式を全部書いていきます。

◯1行目
対数 log_a b(底がa、真数がbの対数)とは、「底aを何乗したらbになるか」という数です。したがって、α^?=β であるとき、「底αを?乗したらβになる」ため、?はlog_α β(底がα、真数がβの対数)となります。
eとは、y=e^x というグラフの、x=0のときの微分係数が1になる、という特別な数です(正確には、こうなるようにeという数を定義した)。y=e^x を微分すると y=e^x (そのまま)になる、という性質があり、この声質を3行目から4行目にかけての式変形で使っています。

◯1行目から2行目
対数の性質

◯2行目から3行目
合成関数の微分です。感覚的に、d(a log_e x) を約分すると d(e^(a log_e x))/dx、つまりe^(a log_e x) の微分になるため、とりあえず納得はしていただけると思います。
詳しい説明はここでは省きます。(気になる方はココ

◯3行目から4行目
1行目の式変形の説明のところでも説明したとおり、eという数は特別で、e^X を微分してもそのままである、という性質があります。
a log_e x の微分は、とりあえずaは定数なので外に出せます。log_e x をxで微分すると、実は1/xになります(詳しくはココ

◯4行目から5行目
指数法則
◯5行目から6行目
1/x = x^(-1) 

◯6行目から7行目
指数法則

さて、すべて説明が終わりました。
こんなところで指数関数の微分を使ってもいいのか、すごく気になるところですが…ともかく、わりと綺麗に証明できたと思います。
いかがでしょうか。

2012/05/12

回転行列の導出には加法定理を使う?

5時間くらい前に投稿した加法定理の証明の中で、一次変換を使いましたが…
なんか循環論法になっちゃってるような気がしてきたので、確かめてみました。

ベクトルa=(p,q)をθ回転させてみます。
θ回転する変換をfとおくと















よって、θ回転する変換を表す行列は
cosθ -sinθ
sinθ  cosθ



よかった、回転行列の導出には加法定理は使われてませんね。
循環論法にはなっていませんでした。

2012/05/11

三角関数の加法定理の証明

三角関数の加法定理の証明。
教科書に書いてあった証明がキモチワルイので…いろいろ考えてみた。
教科書のやりかたは、ココに書いてあるのと似ています。

①ベクトルを使ってみる

この図で、
です。
ここで、aベクトルはベクトル(cosα, sinα)と平行で、大きさは 1×cosβ=cosβだから
また、bベクトルは(cosα, sinα)ベクトルと直交するベクトル(-sinα, cosα)と平行で、大きさは 1×sinβ=sinβだから
よって


よって、
 sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβ
 cos(α+β)=cosαcosβ-sinαsinβ
が得られました。
(ここで、それぞれβ=-βを代入すれば sin(α-β)、cos(α-β)が、
 sin(α+β)/cos(α+β)を計算すれば tan(α+β)が得られます。)

②一次変換を使ってみる

ベクトル(cos(α+β), sin(α+β))は、ベクトル(cosα, sinα)をβ回転させたものです。
だから、

よって、
 sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβ
 cos(α+β)=cosαcosβ-sinαsinβ
が得られました。





2つしか思いつきませんでした…
他にもいろいろとやり方がありそうですね。